家出人の行動は地域によって差があります。トップページでも触れたこのトピックについて、もう少し詳しく解説しましょう。
情報提供してくださったのは、原一探偵事務所本社(埼玉県川越市)の探偵A氏です。
群馬とともに神奈川県・埼玉県での調査経験も長い方なので、他地域との比較も入れながら特性を語ってくださいました。
取材日時: 2016年5月19日
【原一探偵事務所・探偵A氏】
尾行・張込みなどの調査実務に支障が出るので、顔にはモザイクを入れています。
典型的な行き先
群馬県の家出人は、多くの場合、東京都心に向かい、県内に留まることはまずありません。
県内にはネットカフェなどの安価な滞在先が集積した、居心地のいい猥雑な街がないこと。
そして電車も高崎線が上野に直結していることもあって、一気に東京まで出てしまいます。
これは神奈川県の家出人がまず横浜駅周辺を選ぶ傾向にあるのとは対照的です。
都心の滞在先事情
さて、上野は東北の玄関口であり、出稼ぎのお父さんが降り立つ駅です。
上野から隣りの御徒町にかけて、街にはレトロで庶民的な雰囲気があふれています。
地味な人やお金の無い人・おしゃれに自信がない人でも居心地のいい土地柄なのです。
そして御徒町の延長には秋葉原があります。
ここは周知のとおり、オタクの聖地であり、おびただしい数の安価なネットカフェや漫画喫茶が集積しています。
ホテルに泊まるお金のない家出人が長期滞在できる安宿がたくさんあるのです。
さて、上野~秋葉原に次ぐ家出人の滞在先候補は、池袋・新宿です。
ここも安価な滞在先がたくさんある猥雑なエリアですが、上野・秋葉原とはカラーが違います。
おもしろいことに、池袋になじみのある人は新宿を怖い街と思い、新宿になじみのある人は池袋を怖い街と思う傾向にあるようです。
渋谷・原宿・表参道はファッションの最先端を行く「まぶしい街」で、滞在先に選ばれることはまれです。
しかし、見物のぶらり歩きには飽きない場所なので、家出人の属性によっては捜索先に入ります。
大崎・品川・新橋方面はビジネス街であり、家出人の行き先としては考えにくいエリアです。
自殺を計画している家出人の傾向
さて、先に述べたことは家出人が自殺を考えている場合には当てはまりません。
その可能性があるかどうかは、家出の事情や当人が部屋に残したものなどから判断します。
このタイプの家出人は、成人男性が多いです。
仕事に行き詰まった30前後の人と、リストラなどで将来を悲観した50代のお父さん世代が多いです。
女性の家出人で自殺に及ぶ人は少なく、現場の探偵は皆「挫折した時は男の方が案外弱い」という印象を持っています。
行動の傾向としては、死を選ぶ前に懐かしい場所を訪ねることが多いです。
子供時代を過ごした場所とか、自分が通った大学のある町とかが候補になります。
いろいろな場所を移り住んだことがある人ほど、捜索先の候補は増えることになり、絞り込みの的確な判断が求められます。